精神分析的な臨床実践には,知的な学習と,体験的な学習が必要だと言われています。
精神分析研究会・神戸では,知的学習として,幅広い理論や技法に触れるための系統講義,重要論文を精読する文献講読という2つのプログラムを用意しています。
体験的学習としては,事例の検討が中心となります。多様な事例に触れることのできるセミナーの事例検討と,少人数でのグループスーパービジョンがあります。
2025年度講義テーマと内容
御池心理療法センター
代官山心理・分析オフィス
講義テーマ「フロイト、クライン、ビオンにおける治療作用論の変遷」
この三人は、精神分析の創始と発展を代表する人たちです。彼らの治療論がどのような時代に、どのような精神病理を対象として発展したか、また、それが彼らの個人的な問題意識と課題にどう呼応していたかを論じて、現代の諸問題につなげたいと思います。
【参考文献】1)福本修著「精神分析の現場へ」誠信書房 2)クリス・モーソン編、福本修訳「W/Rビオンの三論文」岩崎学術出版社
大阪教育大学保健センター
講義テーマ「心の仮死とその蘇生:心的生命論入門」
現代の臨床では、発達症とトラウマの理解が必須です。治療では、心が心として生きているという心的生命論の観点から「心の仮死」を感知することが有用です。「自分になること」という破局的変化、つまり心的蘇生が生じます。本講では心的生命論の発想を解説します。
Tavistock Clinic
講義テーマ「精神分析の治療作用」
精神分析的療法の中で、精神療法家の関わりはどのように患者たちに体験され、影響を与えるのでしょうか?患者の理解の変化、発展を元に、精神分析的精神療法家が、何をもたらそうとしているのかについて考えていきます。
※この回はロンドンからのオンライン開催により16:00~20:45となります。
上智大学
講義テーマ「関係論にとって治療作用とは何か」
関係論は、古典的な精神分析の中に相異なる複数の視点を見出し、かつそのいずれも否定することなく多元的に捉えようとします。そのような姿勢の結果の一つは、治療作用についての根本的な見直しです。本講義ではこのことについて話します。
Tavistock Clinic
講義テーマ「心的変化における夢の働き」
本講義では精神分析臨床において夢をどのように理解し分析してていくかだけでなく、夢、さらには夢見という現象(ドリーミング)が精神分析プロセス、そしてそのプロセスのなかで生じうる心的変化においてどのような影響を有するかについて検討していきます。
※この回はロンドンからのオンライン開催により16:00~20:45となります。
小林メンタルクリニック
講義テーマ「逆転移と治療作用」
分析的な交わりは、他なるものとの衝撃によって自己が変容を被るとともに、新しい何かを生み出す交流を指します。重症例では、このような心的変化はまず、治療者の逆転移と言われるものの労苦の多い仕事を通して訪れます。皆さんとともにこのことを考えたいと思います。
【参考文献】1)John Steiner : Lectures on Technique by Melanie Klein. 2)Robert Caper : A Mind of One’s Own.(「米国クライン派の臨床」岩崎学術出版社)
浅田心療クリニック
講義テーマ「治療の行き詰まりと破局的変化-特に集団心性をめぐって」
2017年精神分析学会編集委員会企画による、特集「精神分析を構成するもの 第5回:心的変化と治療の成り立ち」において平井正三氏と討論した時の演者の論文「重症例の治療的変化と治療の成立」に沿って講演します。
【参考文献】浅田護(2017):重症例の治療的変化と治療の成立.精神分析研. 61,176-189
クリニックおくでら
講義テーマ「外傷のケースにおける治療作用とは何か」
多彩かつ不安定な病状、衝動的な行動とは裏腹に速やかに回復を見る症例が少なくない一方、治療が遷延し適応以上の(つまり内的な)回復がはかどらない患者が一定数います。セミナーでは主に後者について検討したいと考えます。
新大阪心理療法オフィス
講義テーマ「治療終結をどう考えるか?:様々な判断」
心理療法の開始時同様、終了時の判断もまた難しいものです。いつ、どう、何の、誰の要因で終了を決断するか、その後どうなるか等、治療者の逡巡や後悔も含め、ご参加の皆さんの体験も踏まえ、共に考えてみましょう。
沿 革
関西精神療法研究会(KSK)の立ち上げ
小林和(精療クリニック小林院長)が関西初の精神分析セミナーである「関西精神療法研究会KSK」を立ち上げた。第1回講師は西園昌久、第2回は小此木啓吾であり、関西地区における精神分析のリーダーを輩出する母体となった。
精神分析研究会・神戸 発足
神戸大学の木曜会とKSKが合併し、小林俊三(当時は神戸大学)を代表として、「精神分析研究会・神戸」が発足した。
小林俊三が研究会代表に就任
分析協会の訓練のために代表を離れていた小林俊三が代表に復帰した。
研究会の基本方針を巡ってこれまでの運営委員が離れ、新たに複数の運営委員を迎えた。対象関係論を中心に諸学派の基礎を提供していくこと、精神分析のトレーニングを十分に受けた人物を講師に招くことを方針とすることが再確認された。
運営委員:
小林俊三(代表)
飯塚暁子
小畔美弥子
越道理恵
齊藤幸子
松村博史
講義テーマ「治療関係における相互性と協働―精神分析的観察との関連で」
精神分析実践の治療的性質について、治療者の理解や解釈を強調する考えから、クライエント/患者との協働から理解が生じること、そしてそれ自体が治療的であるという考えへと変わってきています。本講義ではこの点について話します。